国交省調査、断熱改修が高血圧予防に
「9割の住宅、室温低すぎ」
断熱改修は健康に好影響を与える―――。日本サステナブル建築協会(東京都千代田区)は1月29日、室温を高める改修が体に良い影響を与えるとの研究結果を発表した。これは国交省主導の下、学識経験者によって行われている研究。断熱改修の価値を数値で示す取り組みとして注目されている。
全国1680件の住宅を調査
調査は断熱改修を予定している全国の住宅1680件、3441人を対象にした大規模なもの。2014年に始まり、2019年まで行われる計画。今回はリフォームをした403件、676人の健康がどう変わったかについての調査結果を公開した。
この研究から得られた知見の1つは、断熱改修などで室温が上昇すると、起床時に高血圧になる確率が下がるということ。室温が平均2.5℃上昇した場合には、血圧が2.8mmHg低下することが確認された。高血圧によって引き起こされる脳梗塞などのリスクを減らすことになる。
研究チームでは室温が10℃の場合、高齢者は高い確率で高血圧になりやすいと分析。具体的には60代男性で61%、70代男性で81%、80代で92%。これらの確率を半分に下げるには、居室温度がそれぞれ14℃、20℃、24℃必要だという。
「年齢を経れば経るほど高齢者の血圧は、室温の影響を強く受ける」(研究チーム)
もう1つの知見は朝の室温が低い家に住む人ほど、動脈硬化指数や心電図異常所見の確率が高くなることが分かった。さらに就寝前の室温が低いほど、夜間頻尿のリスクが高い結果も得られた。
慶應義塾大学・伊香賀俊治教授は「日本の9割の家がイギリス政府が健康を保つ室温として定めている18℃を満たしていない」と警鐘をならす。研究によれば、在宅中の居間の平均室温は12.9℃、就寝中の寝室は11.4℃、在宅中の脱衣所は10.4℃だった。
「国民の健康を守るべく厚生労働省が進めている『健康日本21』には、住環境の対策が入っていません。調査が十分なエビデンスだと認知されれば、住まいも重要な要素として取り上げられるはず」(伊香賀教授)
リフォーム産業新聞(2018/02/13発行)1面より