パナソニックES社、異例の「キッチン」開発

「家電」と「住設」、垣根越え連携

 

住設大手のパナソニック エコソリューションズ社(大阪府門真市)が新たな住宅設備の開発に乗り出した。家電の開発を手掛けるアプライアンス社などと連携しグループ間の垣根を越えた「住空間」提案を開始。住設の単品売りにはない価値を訴求し、新たな需要を掘り起こしたい考えだ。

「クロスバリュー」がカギ

「今回発表した住空間は、家電と住まいの設備を掛け合わせ新たな価値を生み出す取り組み、クロスバリューイノベーション」。こう話すのは執行役員エコソリューションズ社副社長の村田和弘氏だ。パナが12月に受注を開始する「住空間」商品は同社にとって異例の商品。これまでキッチンはキッチン、バスはバス、というあくまで住設「単品」として開発し、メーカーや工務店に提案をしてきたが、今回は「住空間」として売る商品なのだ。さらに、同社の住設開発としては珍しい、家電部門といったグループ内の他の部門と連携することで、これまでにはない新しい機能を持った商品開発に至った。

料理はみんなで

例えば新たに発売するキッチン「Irori Dining(いろりダイニング)」は他のキッチンメーカーにはない独創的な商品と言える。商品名にもあるとおり「囲炉裏」がテーマになっており、家族や仲間が集って、一緒に料理をしながら、その場で食事が楽しめるというもの。この「現代版」囲炉裏がユニークなのは写真(1)を見てもらえれば分かるようにカウンターの中央にIHが組み込まれているため、リビング側の人も、ダイニング側の人も、それぞれが調理に関われ、会話ができるという構造。

例えば、どちら側からも火力を強くしたり弱くしたりできる操作盤が付いており、このような機能はキッチン専業メーカーにもない珍しい作りになっている。また、シンクも3方向から使える「ラウンドアクセスシンク」を採用し、片付けまでみんなでできる仕様になっている。

「語り合うキッチンができないかと考えた時、IHの技術を持つ家電開発のパナソニックアプライアンス社とエコソリューションズ社の住設の技術をクロスさせたことで実現できた商品」(エコソリューションズ社執行役員副社長、ハウジング事業部長、山田昌司氏)

レンジフードも見直し

部門の垣根を越えた開発はレンジフードの見直しにもつながった。キッチンで会話をするためには、レンジフードの音は極力静音でなければならないとの意見があり、廃熱するためのファンは天井裏に配した。ユニットファンを会話する人たちから物理的に離すというアイデアで、図書館並みの音に抑えられたという。

価格は「ラウンドアクセスガラステーブルプラン」で約456万円。新築もリフォームでも可能。50~60代のこだわりの世帯がターゲットとなっている。

パナソニックアプライアンス社副社長の大瀧清氏は「家に住まうお客さんを中心におき、望むことを洗い出し、垣根を越えて開発する。混じり合うことで空間ができた」と語る。

2020年に350億円

バス空間、ドレッサー空間も開発、2018年は70億円、2019年は200億円、2020年に350億円の売り上げを見込む。

新商品開発の背景には、エコソリューションズ社の住設を担う「ハウジングシステム事業部」の売上高の伸び悩みにある。2014年度は3664億円、2015年度は3536億円、2016年度は3671億円で、前年度比で約4%増となっているが、やや停滞気味だ。総合家電・住設メーカーだからこそできる「モノ視点ではなく、コト視点」(村田氏)の物作りで業績を大きく伸ばせるか、注目だ。

リフォーム産業新聞(2017/11/21発行)24面より